■開会の辞(14:00~14:10)
福島雅典 LHS研究所 代表理事
ラーニングヘルスソサエティー(LHS)、これから建設すべき活力ある長寿健康幸福社会のビジョンです。アカデミアによって創出された医療イノベーションを速やかに社会実装し、その結果をフィードバックして、さらなるイノベーションにつなげるエコシステム、ラーニングヘルスシステムを確立して健康寿命延伸に貢献します。
■基調講演1(14:10~14:30):「フレイルフリーを目指した社会づくりの展望」
荒井 秀典氏 国立長寿医療研究センター理事長
我が国の平均寿命は84歳を超え、高齢者人口も30%に近づいています。今後もますます高齢化が進む中、さらなる健康寿命の延伸が求められています。そのための1つのポイントはフレイル予防であり、病気を抱えていても、フレイルにならないようにすること、またフレイルになっても健常な状態に戻るよう日々努力することで要介護状態になることを先延ばしすることができます。本講演では、我が国の高齢化の状況を踏まえ、これまでのエビデンスを整理し、今後名古屋市においても導入可能なシステム構築について議論したいと考えています。
■講演1(14:30~14:45):「再生医療の社会実装」
外園 千恵 氏 京都府立医科大学 眼科 教授
稀少難治疾患を対象として培養自家口腔粘膜上皮シート移植の社会への橋渡しを進め、2022年1月に薬事承認を得ました。本治療の適応、効果、今後の展望を述べさせていただきます。
■講演2(14:45~15:00):「Muse細胞のもたらす医療イノベーション」
出澤 真理 氏 東北大学大学院 医学系研究科 教授
・生体内修復幹細胞としてのMuse細胞の特徴
・Muse細胞を用いた細胞治療は何が凄いか
・前臨床試験および治験の成果について
■講演3(15:00~15:15):「難病プラットフォームの確立と展開」
山野 嘉久 氏 聖マリアンナ医科大学 内科学 脳神経内科 教授
松田 文彦 氏 京都大学 総長主席学事補佐 大学院医学研究科 教授
難病はその稀少性から、患者レジストリによる情報基盤の構築や研者者横断的な情報共有が研究促進のために重要です。難病プラットフォームでは、国内の難病研究班のレジストリ構築・運営の支援とデータシェアリングの推進を行なう仕組みと体制の構築を進める傍ら、データシェアリングの充実化、企業マッチングによる技術やシーズの実用化を促進する活動を行っています。本講演では、 難病プラットフォームの概要と今後の展望について概説します。
■基調講演2(15:25~15:45):「共有型意思決定を支える臨床予測モデル」
手良向 聡 氏 京都府立医科大学 大学院医学研究科 生物統計学 教授
講演では臨床予測モデルの構築、具体的には、分類と予測、過剰適合、内的妥当性と外的妥当性、予後予測の挑戦などについて概説します。
■講演4(15:45~16:00):「フレイルフリー社会を目指して-新しい運動療法のイノベーションHAL-」
中島 孝 氏 独立行政法人国立病院機構新潟病院 院長
・成熟脳は決して再生しないというラモニカハールのドグマによって、神経系に病変のある疾患群での機能再生治療研究は、いままで閉塞状況にあった。
・難治性神経筋8疾患に対するHAL医療用下肢タイプによる歩行運動療法の無作為化比較対照試験の成功は、神経系の運動療法・機能再生療法分野に革新的イノベーションをおこした。
・今後、HALと核酸医薬、低分子薬、遺伝子導入治療などとの複合療法が難治性疾患治療に必須になるだろう。
・多発性硬化症、パーキンソン病、脊髄損傷、脳卒中など全ての運動機能障害に対してHALは原理的に有効であると考えられ、それぞれ治験(RCT)により検証し、さらに医薬品、再生医療等製品との複合療法も検討していきたい。
・フレイルフリー社会を目指したアプローチ法として難治性疾患から高齢疾患および生活習慣病まで、HALは不可欠な治療法となるだろう。
■講演5(16:00~16:15):「要介護ゼロ社会の実現を目指す行政データの活用」
永井 洋士 氏 京都大学医学部附属病院 先端医療研究開発機構 教授
・WHOとの共同研究として実施してきた「認知症の社会的負担軽減に向けた神戸プロジェクト」の成果
・将来の要介護リスクを評価する上での住民サーベイランス/健診データの活用とそれを利用したLearning Health Societyの実現に向けて
■閉会の辞にかえて(16:15~16:30):「医療のDXに向けた情報の標準化FHIR」
大江 和彦 氏 東京大学大学院 医学系研究科 医療情報学分野 教授
・医療のDXで最も重要なのは医療と日常生活の間の健康医療情報のデジタル流通である。
・デジタル化された健康医療情報の流通をスムーズに行うには標準化の普及が必要不可欠であり、そのための標準化としてFHIR仕様の国内普及を目指す。
・我々は、学会研究会とコンソーシアム活動を連携させて、FHIR仕様の国内実装標準をまとめ、公表し、普及推進のためサーバソフトをオープンソースソフトウエアとして開発し提供を開始した。
・このプラットフォームを今後の健康医療情報のデジタル流通基盤の実例にしていきたい。